そいつを抱いた時

親父から与えられた部屋
成長のない毎日
昼頃 目を覚ますと楽しい夢も覚めるほど一般的な両親の小言
ある夜シュラフを250に積んで振り切るようにアクセルを回した
ポケットの中には2万円ちょっと何の当てもなかったよ
深夜トラックの熱気に煽られ
けど16号線の風を感じれば英雄のような気がした
そいつを抱いた時心臓は脈打った
そいつを抱いた時涙が零れそうになった
どんな不安な夜もちょっと手を伸ばせば確かに生きてる感じがしたんだ

とりあえずぼろいアパートを見つけ 食うため何とかバイトを探した
枕の上で毎日同じ夢を眺めて同じような仲間も出来た
何もかも新鮮だった
おまえという女も出来た
そのうち4畳半の俺の部屋に居座りなおさら狭くなった
風呂に行けず流しで頭を洗った
でも皆で安酒を飲んで朝まで笑ってたんだ
そいつを抱いた時心臓は脈打った
そいつを抱いた時涙が零れそうになった
どんな不安な夜もちょっと手を伸ばせば確かに生きてる感じがしたんだ

時が経ち叶わぬ夢に苛立つ
一人また一人と離れてゆく
皆世間と同じことを言い出し始めた
俺の夢も小さくなった気がする

俺はもう愚痴ばかり
おまえは横で本を投げる
おまえの顔は化粧で荒れて昔に比べ乾いている

西日が入る頃目を覚ます
相変わらず最低な毎日
風の噂でおまえには2人の子どもがいると聞く
夜の公園の噴水をよく見に行った
おまえの髪に飛んだ水飛沫が光っていた
そいつを抱いた時心臓は脈打った
そいつを抱いた時涙が零れそうになった
どんな不安な夜もちょっと手を伸ばせば確かに生きてる感じがしたんだ