見えない男

夕べ見た夢で僕は 薄暗い階段を 見えない男に追われ必死で駆け降りていた
男の腕に掴まらないように大声を上げて弾丸の出ない拳銃を必死で振り回しながら…
目が覚めた時 背中も肩も鋼のように強張り シーツは汗でぐっしょり濡れていた
狭い部屋を出ると通りはやけに静かで 人一人居ずに自販機だけが光っていた

幼い頃 親父はいつも不機嫌そうでいて 仕事から帰るとまた家族に怒鳴り出す
僕と姉はいつも怖くて震えていた 突然の怒りにまた食事が止まるから…
ある夜のこと親父が一人明りの無い部屋で
闇の中に潜んでいる何かを睨みつけるようで…
真っ暗な林の方から聴こえてくる野良犬の遠吠えに僕は辺りを見回した

さっきから僕は長い国道の上に立ち 歩いてきた道程をずっと見つめている
いったいこれまで闇の上に架けられた橋をいくつ渡ったのだろうか?
僕の過去を今夜もう一度辿って 弾丸の出ない拳銃をそこで捨ててしまおう
見えない男よ また路地裏で会おう
そしていつかおまえの姿を暴いてやろう